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環境保全型ポーラスコンクリート積みブロック護岸における微生物の生息状況報告書
1-1.目的
本調査は、河川に積みブロック護岸として設置されたポーラスコンクリートブロックの水質浄化機能(環境機能)について把握するために、その一部(調査用供試体)に付着・生息する生物を調査するものである。
このため、調査対象となる供試体を護岸の右岸面に、上流部、及び下流部にそれぞれWL(水面)より上部(上)、WL(中)、WL下部(下)に設置し、又、コンクリートのアルカリ度の違いによる生物の付着、生息状況を把握するため、現地調査の2週間前に新鮮な調査用供試体を水中に放置した。
1-2.調査場所
・奈良県生駒市平群町櫟原地内 櫟原川
1-3.調査期間
・自 平成12年7月4日
・至 平成12年7月21日   ※現場調査:7月4日
1-4.調査機関
株式会社 応用地学研究所 生物工学研
     〒425-0046 静岡県焼津市三右衛門新田531
1-5.調査内容
(1)現地調査
   現地の概況調査、及び試料採集
(2)生物分析
  ・好気性従属栄養細菌群数
  ・付着性微小動物群
  ・その他の関係物群
(3)検討
   調査結果のまとめと今後の課題
2-1.ポーラスコンクリートブロックの概要
(1)型状及び品質特性
 ブロックは、JISA5323に規定される型状寸法のもので、その型状、及び品質は、表2-1の通りである。
(2)使用材料
 ブロックは、結合材として、高炉B種セメントを使用し、粗骨材、及び細骨材には、砕石、及び砕砂を使用した。骨材の品質については、表2-2の通りである。
なお、混和剤等は使用していない。
2-2.ポーラスコンクリート積みブロック護岸の概要
 調査を行ったポーラスコンクリート積み護岸は、櫟原川(奈良県平群町櫟原地内)の右岸に河川災害復旧工事(11災251号)として平成12年2月28日~平成12年3月24日の間に施工されたものである。
(1)ポーラスコンクリート積みブロック護岸の構造
 ポーラスコンクリート積み護岸は、自立式のポーラスコンクリートブロックを積み上げ、胴込部にコンクリートを充填した通常のブロック積み護岸と同じ構造であるが、使用するブロックが、通水性を持つポーラスブロックであるため、水や空気が護岸により遮断される事なくブロックを通過して自由に動く事が出来る。
(2)工事の状況は、写真2-1の通りである。
 この工事に調査用のポーラスコンクリートブロックを図2-1、図2-2に示した位置に設置した。
 工事に使用するポーラスコンクリートブロックより、直径75mm×長さ100mmの供試体(コアー)を抜き取り、ブロック設置後、抜き取った穴に供試体を戻し、この供試体を調査用供試体として、これに付着生息する生物を調査することとした。
なお、ブロック及び供試体は図2-3の通りである。
表2-1 ブロックの型状及び品質
    • 控長の寸法について(JIS A 5323-1997)を参考に
      突出部の内 20mmを控長の寸法に加える。
製造年月日
平成12年3月6日
検査年月日
平成12年3月13日
規 格 値
規 格 値
圧縮強度
12N/mm2
以上
(材令7日)
質量平均
33.0kg
以上
空隙率
15%
以上
合否
判定
面長 420
+6 -3
面高280
+6 -3
控長 350
+5 -5
実測値
1
424
278
350
20.1
36.8
18.5
2
423
280
350
19.1
37.5
20.1
3
424
279
351
-
-
-
4
423
280
351
-
-
-
5
426
278
353
-
-
-
平均値
424
279
351
19.6
37.2
19.3
注)検査数は、製造仕様書 9)に定めた調査数による。
表2-2 ブロックの型状及び品質
試料名
試験
項目
フルイ分け試験(通過重量%) フルイ目(mm)
0.15
0.3 0.6 1.2 2.5 5.0 10 15 20
細骨材
5.6
18.6 35.0 53.7 94.8 100
粗骨材
0
0 0 0 0.2 0.5 41.4 100
試料名
試験
項目
粗粒率
比重
吸水率(%)
単位容積
質量
(kg/l)
実績

(%)
微粒
分量
(%)
粘土
塊量
(%)
細骨材
2.92
2.61 1.34 3.24 0.2
粗骨材
6.58
2.68 0.62 1.481 55.6 0.49 0.19
細骨材 粒度曲線
粗骨材 粒度曲線
写真2-1 工事の状況
 1.調査施工場所 櫟原川(生駒郡平群町櫟原地内)
 2.工 事 名 11災251号 河川災害復旧工事
 3.設置勾配 1:0.5
 4.施工面積 41.9m2
 5.ポーラスコンクリート空隙率 15%以上
ブロック設置状況
調査用供試体を入れる前 調査用供試体を入れた後
図2-1 調査用ブロック設置位置
図2-2
図2-3 微生物生息状況調査用供試体抜取位
  
調査用供試体抜取位置
調査用供試体
3-1.調査結果
 (1)調査日時
 平成12年7月4日  13時~14時
 (2)天候・流況
 当日の天候は晴れ、気温31.2℃、水温24.3℃であった。流況は安定で、平常時調査と位置付けられる。
 (3)供試体等の状況
 予定していた供試体の内、右岸上流側・下流側の下部に設置された供試体は先行した出水により土砂に埋もれ、回収不可能であった。また2週間前に放置した供試体も、1個を除き出水の影響で発見不可能であった。幸いに水際の供試体が理想的状態にあったので、これを中心に効果確認を展開することとし、採取不可能な下部に放置された供試体の代わりに水中にあった『自然石』と、工事に使用した『ポーラスブロックの破片』を検討対象に追加した。
図3-1 調査時における供試体の状況模式
(4)供試体の前処理・観察結果
 供試体の前処理時観察結果を表3-1にまとめた。
 ポーラスコンクリートブロック破片と上流の中供試体からは水生昆虫のトビケラやカゲロウがいくつか検出された。本試験の目的からして重要であると判断し、サンプルとして保存した。両供試体の共通の特徴としては、比較的長期間に渡って水没していたことが挙げられる。下流:中の供試体は、当日は半水没状態であった。2週間供試体はおそらくアルカリが抜けきらない状態であると推測される。このことは現地に十分馴染んだポーラスコンクリートブロックが水生昆虫などの中型河川生物にとって有効な河床材料でえあることを示唆する重要な証拠である。
表3-1 ポーラスコンクリートブロック護岸供試体観察結果
3-2.前処理および試験方法
(1)試料の運搬
 現地で回収した供試体は個々に清浄な厚手のビニール袋で包み、アイスボックスで十分氷冷(5℃以下)し、試験室に搬入した。
(2)試験面の処理
 自然石およびブロック破片はあらかじめ用意しておいた5×5cmの滅菌アルミフォイールコドラートを当て、この面に付着する付着物を滅菌ハブラシと滅菌蒸留水を用いて回収した。コアー供試体については丸面(75φ)について同様に回収した。
 回収された付着物を滅菌試験管に移し、滅菌蒸留水により各々10mリットルに定容した(試験原液)。
(3)従属栄養殺菌群の培養
1.接種液の調製
 試験原液をよく撹拌し、内1mリットルを9mリットルの滅菌蒸留水の入った滅菌試験管で希釈し、同様に順次希釈し、1/10、1/100、1/1000、1/10000液を調製した。
2.接 種
 あらかじめ調製しておいた桜井の平板寒天倍地(90φシャーレ)に希釈液の内1/100、1/1000、1/10000液を0.1mlづつを各々3枚に接種した(9検体×3濃度×3枚=81枚)。
表2-2 桜井(PGY)倍地の組成
添 加 物
添 加 量
  ペプトン
  粉末酵母エキス
  グルコース
  粉末寒天
  pH
  オートクレーブ
  2g
  1g
  0.5g
  15g
  7.0±0.1
  121℃15分
3.培 養
細菌を接種したシャーレは試験区毎にサランラップで包み、20±1℃の恒温槽に1週間インキュベートした。
4.計 数
培養1週間のシャーレを取りだし、各々の倍地表面に形成されたコロニーを計数し、最も信頼のおける濃度区の計数値の平均をもとに単位面積当たりの従属栄養細菌数を求めた。
(4)付着性微小動物群の分析
1.固 定
各々の試験原液(残り9ml)に1mlのホルマリンを加えて固定した。
2.検 鏡
生物光学顕微鏡下(100倍~400倍)で固定・計数した。
3-3.生物群分析結果
(1)従属栄養細菌群培養結果
 本試験では培養条件を好気としているため、寒天表面に形成された従属栄養細菌コロニーは基本的には好気性従属栄養細菌コロニーである。従って本報で言う従属栄養細菌群は特に断りがない限り好気性従属栄養細菌群を指す。
表3-3に好気性従属栄養細菌群の培養・検出結果を示した。
1.供試体による差異
 細菌が最も多く検出されたのは上流右岸中部の表面で、1cm2当たりの細胞数は16万細胞を上回った。次いで多いのは下流右岸中部の表面とポーラスブロック破片で、1cm2当たりの細胞数は11万細胞程度を数えた。
 自然石と2週間放置供試体は4万~6万細胞/cm2とほぼ同じオーダーであった。
2.水環境(乾燥度合い)による差異
 上流右岸上部の干出供試体では、従属栄養細菌は検出されたものの、1cm2当たりの細胞数は1500細胞程度であった。
3.表面と内部の差異
 何れの供試体においても、設置した供試体の表面と内部では、細菌数に大きな違いが見られた。しかしながらの奥行きは10cmあるので、この程度の内部でも表面の1/10から1/100の細菌が存在または生息していることは明らかである。
4.短期間浸漬の結果について
 2週間放置の短期間浸漬コア供試体は外見上は付着物が少なく見えたものの、細菌付着密度から見れば自然石のそれを凌駕した。この結果からすれば、浄化素材としてのポーラスコンクリートの使用にはエージング等の劣化努力は特に必要ないものと思われる。
表3-3好気性従属栄養細菌検出結果(細胞数)
(2)付着性微小動物群分析結果
 供試体に付着・随伴していた微小動物の分析結果を表3-4に示した。単位面積は100cm2として示した。
1.供試体による差異
 微小動物群が最も多く見られたのは細菌と同様の上流右岸中部の表面で、100cm2当たりの個体数は180個体を数えた。次いで多いのは自然石で100cm2当たりの個体数は170個体を数えた。ポーラスブロック破片も比較的多く、約125個体/100cm2であった。
2.水環境(乾燥度合い)による差異
 当然のことではあるが、上流右岸上部の干出供試体では、微小動物群は見られなかった。
3.表面と内部の差異
 出現が確認された何れの供試体においても、設置した供試体の表面と内部では、個体数に大きな違いが見られた。しかしながら上流右岸中部の内部では100cm2当たりの個体数は10.2個体を数えた。供試体の奥行きは10cmあるので、この程度の内部でも表面の1/10程度の微小動物が存在または生息していることは明らかである。
4.短期間浸漬の結果について
 2週間放置の短期間浸漬供試体は外見上は付着物が少なく見えたものの、下流右岸中部の半干出供試体に比べれば多くの微小動物が見られた。細菌の結果と同様、この結果からすれば、浄化素材としてのポーラスコンクリートの使用にはエージング等の劣化努力は特に必要ないものと思われる。
写真3-1
  Arcella discoides

 原生動物アメーバの仲間でバクテリアやデトリタスを摂食する。ダム湖のような比較的きれいな環境に生息する。

写真3-2
  Vorticellidae

 原生動物繊毛虫の仲間でバクテリアやデトリタスを摂食する。一般にツリガネムシと呼ばれる。
 この仲間は活性汚泥では2次浄化生物として重要視される。

写真3-3
  ROTATORIA

 後世動物輪虫の仲間でバクテリアやデトリタス、藻類を摂食する。一般にワムシと呼ばれる。
 この仲間は活性汚泥では2次浄化生物として重要視される。

写真3-4
  NEMATODA

 後世動物線虫の仲間でバクテリアやデトリタスを摂食する。一般にセンチュウと呼ばれる。
 この仲間は活性汚泥では2次浄化生物として重要視される。

写真3-5
  Ephemeroptera

 後世動物昆虫の仲間で付着生物やデトリタスを摂食する。この写真はゲンゴロウの幼体と考えられる。
 河川生態系では重要な生物である。

写真3-6
  Chironomidae

 後世動物昆虫の仲間で付着生物やデトリタスを摂食する。一般にユスリカと呼ばれる仲間で環境指標に用いられる。
 河川生態系では重要な生物である。

写真3-7
  Chironomidaeの卵

 ユスリカの卵である。最も多く出現した。
表3-4 付着微小動物群分析結果(個体数/100cm2)
(3)その他の関係生物群

 本調査では特に調査対象とはしていないが、供試体表面の付着藻類の目視的差異や供試体処理中に這い出てきた水生昆虫の有無がある傾向を有しているものと考えられたため、参考として定性的まとめを追加した(表3-5)。

 ・ 水生昆虫の確認状況
 供試体処理中に最も多く這い出してきたのはトビケラの一種のウルマーシマトビケラ(Hydropsyche ulmeri)であった。これらを集めたところ、10個体が回収された。次に確認できたのはコカゲロウ属(Baetis sp.)で、数個体が確認された。何れも河川生態系で重要な役割を担う生物群である。
 ・ 水生昆虫の巣と浸漬期間との関係
 水生昆虫が明らかに確認されたのは自然石、ポーラスブロック破片(竣工から2.5ヶ月)と上流右岸中部の供試体である。これと対照的なのが2週間放置供試体で、これからは這い出す昆虫は全く確認されなかった。また当日半水没状態であった下流右岸中部供試体からも這い出す昆虫は確認されなかった。これらの結果から、水生昆虫が河床材料を棲みかとして選ぶ理由は、『常に水に浸かっており、アクなどの化学刺激がないこと』と考えられる。
表3-5  その他の関係生物群観察結果(定性)
++:多い  +:確認できる  -:確認できない

写真3-3-8


上左:低倍率
上右:トビケラ類のサナギ
下左:ウルマーシマトビケラ
下右:ウルマーシマトビケラ


4-1.まとめ

 本調査により明らかな内容を以下にまとめる。

1.供試体による差異
 従属栄養細菌、微小動物群が最も多く見られたのは上流右岸中部の表面であった。
2.環境(乾燥度合い)による差異
 上流右岸上部の干出供試体では、従属栄養細菌は少なく、微小動物群は見られなかった。
3.表面と内部の差異
 従属栄養細菌、微小動物ともに出現が確認された何れの供試体においても、設置した供試体の表面と内部では、個体数に大きな違いが見られた。しかしながら内部においても生物が確認されており、供試体の奥行きが10cmあるので、この程度の内部でも表面の1/10程度の従属栄養細菌や微小動物存在または生息していることは明らかである。
4.短期間浸漬の結果について
 2週間放置の短期間浸漬供試体は外見上は付着物が少なく見えたものの、従属栄養細菌、微小動物ともに付着の存在が確認された。この結果からすれば、浄化素材としてのポーラスコンクリートの使用にはエージング等の劣化努力は特に必要ないものと思われる。
4.水生昆虫の巣としてのポーラスコンクリートの効果
 自然石には当然のことながら水生昆虫が多く生息しているが、水生昆虫は石と石の空隙にしか住み着くことはできない。これに対しポーラスコンクリートは自然石と同じ体積や表面積であっても多くの空隙を有することから、自然石を『平家建て』と見立てるとポーラスコンクリートは『高層アパート』の役割を演じているものと考えられた。
4-2.今後の課題
 今回の調査対象域は比較的清冽な河川ではあったものの、十分な生物の存在が確認され、満足のいくものであったと思われる。当初の期待以上に、ポーラスコンクリートが水生昆虫の生息に極めて効果的であろうことも示唆された。今後更に調査する機会があれば、少し汚濁の進んだ河川を対象に行いたいと考える。また、ポーラスコンクリートブロックを河床材料として使用し、これに生息する水生昆虫等を定量把握することも必要と思われる。
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