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 JISタイプのブロック積み擁壁の断面検討を行う場合、通常は、社団法人日本道路協会「道路土工 擁壁工指針」P79に示される様に、経験に基づく設計手法を用い決定される。「道路土工 擁壁工指針」においては、下記の表にしたがって断面を定めるのがよいと記載されており、国土交通省「土木構造物標準設計 第4巻(擁壁)」においても、擁壁—ブロック積(石積)擁壁(練積)、および擁壁—ブロック積(石積)擁壁(練積)(河川護岸用)に、経験に基づく設計手法が用いられる様に、適用勾配と高さ・擁壁断面との関係が表に示している。また、宅地造成等規制法に関わる造成工事においても同様に、土質の違いによる適用勾配と高さ・擁壁断面との関係が図示されている。
道路土工 擁壁工指針P80 表2-2 直高とのり面勾配の関係(控長35cm以上)
直高(m) 〜1.5 1.5〜3.0 3.0〜5.0 5.0〜7.0
のり面勾配 盛 土 1:0.3 1:0.4 1:0.5 1:0.6
切 土 1:0.3 1:0.3 1:0.4 1:0.5
裏込コンクリート厚(cm) 5 10 15 20
 経験に基づく設計手法は、JISタイプで控長350mm以上・製品質量が350kg/2以上のものを対象としているが、新素材の開発や近年の多自然川づくりへの対応で、形状寸法については規格を満たすが、製品質量が350kg/2を満たさないポーラスコンクリートブロック等が多く使用されてきている。その場合、経験に基づく設計手法が採択出来ない場合もあり、別途構造計算が必要になる場合がある。
 国土交通省や社団法人道路協会等では、JISタイプのブロックは経験に基づく設計手法で構造を決定すると定めているため、重力式・もたれ式・片持ばり式および控え壁式擁壁などの力学的設計手法は定めているが、JISタイプのブロックの力学的設計手法は定めていない。
 JISタイプのブロック積み擁壁に対して、力学的設計手法を定めているのは、農林水産省構造改善局(土地改良事業標準設計図面集「擁壁」、以下:事業設計)と社団法人全国土木コンクリートブロック協会「環境に配慮したブロック護岸工法の手引き(案)、以下:護岸工法の手引き」の2つと思われる。
 事業設計と護岸工法の手引きの対比を下記に示す。
1. 土圧の算定方法について
(1) 事業設計・・・・・・・・ 試行くさび法
(2) 護岸工法の手引き・・・・ 試行くさび法、
但し、発注者との協議により、土圧係数・盛土換算荷重+土圧係数・
試行錯誤法も選択可能。
2. 安定性照査
A)転倒に対する安定性の照査
(1) 事業設計・・・・・・・・ 示力線方程式を用い、擁壁重量と土圧などから求められた合力の位置が擁壁底面で擁壁断面中央1/3の外側の位置より後方にあること。
(2) 護岸工法の手引き・・・ ・ 上記、事業設計と同様
B)滑動に対する安全性の照査
(1) 事業設計・・・・・・・・ 滑動抵抗力/擁壁底面における全水平荷重≧安全率(常時)1.5
(2) 護岸工法の手引き・・・・ 上記、事業設計と同様。
C)並進運動に対する安全性の照査
(1) 事業設計・・・・・・・・ 検証しない。
(2) 護岸工法の手引き・・・・ 並進運動の検討とは、ブロック同士の接合面にて滑動せず、擁壁として一体を保つ事ができるかを照査するもので、ブロック最下段面において検証し、安全率1.5以上とする。
D)地盤指示力に対する安定性の照査
(1) 事業設計・・・・・・・・ 示力線方程式により導き出された擁壁底面における合力の位置に関わらず、鉛直力が等分布するものと考え、許容支持力以下であればOKとする。
(2) 護岸工法の手引き・・・・ 示力線方程式により導き出された擁壁底面における合力の位置が、擁壁中心よりプラス(正面側)の場合は、鉛直力が不等分布で作用し、合力の位置がマイナス(背面側)の場合は、等分布するものと考え、許容支持力以下であればOKとする。
事業設計の考え 護岸工法の手引きの考え方
 上記の通り、農林水産省構造改善局(土地改良事業標準設計図集「擁壁」)と社団法人全国土木コンクリートブロック協会「環境に配慮したブロック護岸工法の手引き(案)」には大きな差異はなく、「環境に配慮したブロック護岸工法の手引き(案)」は、地盤指示力に対して、より安全側の考えを示しています。弊社の場合、その考え方に基づいて力学的照査を行っております。
社団法人全国土木コンクリートブロック協会「環境に配慮したブロック護岸工法の手引き(案)」抜粋
1. 適用範囲
1. 本手引き(案)は、下記の条件に適合する環境保全型ブロック護岸工法に適用するものとする。
(1)施工箇所ののり勾配は、1:0.3以上
(2)護岸の高さは、8m以下
2. 転倒に対する安定性の照査
 転倒に対する安定性は、擁壁重量と土圧などから求められた合力の作用位置が擁壁底面で擁壁断面の中央1/3の外側の位置より後方にあることが条件である。合力の作用位置を求める算出式には“示力線方程式”を使うことを標準とする。
 示力線方程式による算出式を以下に示す。これにより合力の作用位置を求め、ミドルサードの位置とを比較することになる。
 ただし、上載荷重を考慮したり、試行くさび法または試行錯誤法による土圧から土圧係数を求めた場合は、土圧係数には上載荷重による土圧増分が含まれているため、次式の右辺第2項の は としなければならない。
図-4.4 転倒に対する照査
 転倒において安定であるためには、この示力線 Xh が擁壁底面の高さHでブロック控長の中央1/3外側の位置 X'(ミドルサード)より後方でなければならない
 ブロック積擁壁は、締固めた裏込土から反力を受けて安定する。背後のり面への擁壁自重の分力が背面土の受動土圧を超える大きさであれば、擁壁は後方に転倒することになるが、この分力は小さいため転倒することはない。
3. 並進運動に対する安定性の照査
 ブロック同士の接合面において、そこから上部にあるブロック全体に作用する土圧による並進運動に対して安定であるか照査する。
 並進運動の検討とは、ブロック同士の接合面にて滑動せず、擁壁として一体を保つ事ができるかを照査する。これにより求めた安全率が必要安全率以上あることを確認するものである。並進運動に対する必要安全率は =1.5以上を標準とする。
(1)CASE1:擁壁内部崩壊角が、接合幅の控長の1/2に満たないもの
(2)CASE2:CASE1以外の場合
図-4.5 CASE1 図-4.6 CASE2
4. 滑動に対する安定性の照査
 擁壁底面に作用する水平力に対して、滑動抵抗力により所定の安全率を満たすかを照査する。
 滑動抵抗力とは、擁壁底面に作用する鉛直力に、地盤と擁壁底面の摩擦係数を乗じたものである。輪荷重が作用する等、積タイプ護岸機能に対する重要性が高い場合、滑面について照査する。
滑動安全率
5. 地盤支持力に対する安定性の照査
 擁壁底面に作用する地盤反力が、支持地盤の許容支持力以下になることを照査する。
 地盤支持力に対する検討とは、擁壁底面に作用する鉛直力により、大きな沈下が生じないかどうかを照査するものである。算出式は以下に示す。合力の作用位置が擁壁底面の中心よりプラス(正面側)の場合は、鉛直力が不等分布で作用し、合力の作用位置がマイナス(背面側)の場合は、鉛直力が等分布で作用するものとする。なお、設計条件については浮力を考慮することなど現地条件等から十分に検討することが望ましい。
〇擁壁底面での合力作用位置
図ー4.7 合力の作用位置
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